「夏至(げし)」は一年でいちばん昼間の時間が長い日ですね。夏至は二十四節季のひとつですが、梅雨の時期でもあって晴れるとは限らず、あまり意識することはないかもしれません。
季節のイベントといえば、その時々で食べるものがあったりしますよね。桃の節句ではひなあられやはまぐり、端午の節句では柏餅などがあてはまります。
夏至の反対の「冬至(とうじ)」ではかぼちゃを食べるのが全国的な風習ですが、夏至ではタコを食べる風習があります。
ただし、これはどうやら関西だけのようです。夏至とタコの関係がいまいち思い浮かびませんが、どのような由来があるのかって気になりますよね。
昼が長い夏至に関西ではタコを食べる。その由来とは
夏至は毎年日付が変わり、「この日!」と決まっているものではないので、ニュースなどで「今日は夏至です。」と聞くまでとくに意識することは少ないですよね。
毎年、6月下旬の21日か22日が夏至にあたります。夏至は昼間の時間がおよそ15時間程度あり、1年でいちばん太陽が出ている時間が長い日です。
そんな夏至の日に関西でタコを食べる理由ですが、
- タコの八本の足のように、稲穂が八方に根をはって広がるようにという豊作祈願
- 旬のタコを食べて暑さに負けない体力をつけるため
という説があります。
タコの足には吸盤があるので、吸盤がひっつくように根がしっかり田んぼにはって稲穂が成長するようにという願いが込められています。
タコはタウリンなどの滋養強壮の栄養素やたんぱく質が豊富なので、体力作りのためというのは理にかなっていますね。
夏至は田植えの目安
夏至はちょうど田植えの時期と重なるので、豊作祈願と重労働である田植えのために体力をつける、という由来でした。
もともとは「半夏生(はんげしょう)」の時期にタコを食べていましたが、今では夏至に食べるようになったそうですよ。
半夏生は夏至から11日目にあたり、夏至から半夏生の間に田植えをするという風習がありました。近年は田植えも機械化が進み、田植えのための体力作りという必要がなくなったためでしょうか。
「旬のタコを食べる」という部分のみ、風習として残っているようです。
夏至の行事食がない理由は?
冬至では「かぼちゃ」と「ゆず湯」という定番の風習がありますが、夏至では全国的に定着しているものがありませんよね。
その理由は、夏至の時期は田植えや農作業で忙しい時期だったということが関係しています。
昔の農家では、今のように田んぼに自動で水を引いたり機械で田植えしたりという時代ではなかったため、朝から晩まで集落全体で、家族総出で田植えをしていました。
一日が終わると疲れ果ててしまい、夏至の行事食や風習が定着するような余裕がなかったためと言われています。
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夏至に食べるといいとされている行事食は他にどんなものがある?
関西では夏至にタコを食べますが、他の地方でも食べられているものはあるのでしょうか。
愛知県
愛知県東部の三河地方では夏至に「イチジク」を食べます。
イチジクも夏至のころに旬を迎えるので、イチジクを田楽にして食べるのがこの地方での風習となりました。
福井県
福井県大野市では「焼サバ」を食べるという風習があります。これは夏に負けない体力作りという意味合いからのようです。
どちらも旬のもの、地域でたくさんとれるものという共通点がありますね。
関東地方
また、関東地方では小麦粉で作った餅を神さまにお供えして豊作祈願し、田植えが終わると感謝して食べるという風習があります。
和歌山県・奈良県
和歌山県や奈良県では小麦粉ともち米を半分ずつ入れた餅を「半夏生餅」と呼び、夏至の時期に食べていました。
「旬のものを食べる」ことと「豊作祈願のため」というのが、関西の夏至にタコを食べる風習や他の地域で食べられているものとの共通点ですね。
世界の夏至では何を食べる?
日本ではあまり定着していない夏至と夏至の行事食ですが、海外の場合はどうでしょうか。
スウェーデンやノルウェーなどの北欧の国々では夏至の時期は「白夜(びゃくや)」で一日中太陽が昇っていて、日照時間が短い緯度の高い国では一年間でもっとも貴重な季節となります。
これらの国での夏至の時期は「ミッドサマー」と呼ばれ、毎年6月19日から26日の間の夏至に近い土曜日とその前日が祝日になります。
ミッドサマーには広場に柱を立てて花を飾り、若者を中心に民族衣装を着て一晩中踊りあかすという盛り上がりぶり。
スウェーデンではニシンの酢漬けやジャガイモをゆでたもの、サーモンのほか、この夏初めてとれたイチゴを食べます。
ノルウェーでも、ふだん食べない乳製品など特別な行事食を食べます。
日本でも、三重県伊勢市の二見興玉(ふたみおきたま)神社ではみそぎをして海に入るという盛大なお祭りがありますよ。
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まとめ
関西で夏至にタコを食べる風習は、豊作祈願と田植えの体力作りが由来でした。
関西だけでなく似たような風習は全国にあり、海外でも夏至は一年で一番日照時間が長いことから大切な日として盛大に祝う風習があります。
ふだん夏至を意識することは少ないですが、太陽の恵みを感じてみてはいかがでしょうか。